はじめに
私が受験生時代に実際に使用していた基本書と、その使い方をすべてご紹介します。
まずは民事系です。
なお、私が使用していたのは債権法改正前の基本書であることにご注意ください。
民法
総則
■佐久間毅「民法の基礎1 総則」有斐閣
司法試験受験生の多くが使用する基本書。
使い方:ロースクールの授業に合わせて読んだのですが、最終的には何度か通読したと思います。
コメント:司法試験の民法総則は、この本で乗り切ったといっても過言ではありません。
要件、効果、趣旨、必要な学説が過不足なく記載されています。
冒頭にコンパクトな事案が示され、その後事案についての解説が色分けしてなされているのも読みやすくて良かったです。
■内田貴「民法I」東京大学出版会
旧司法試験時代にはスタンダードだったと聞く、通称「うちみん」。
使い方:大学入学時に少しの間使用していました。
コメント:コンパクトな事案に即して説明が入る為、適用場面を想像しやすかったのは良かったです。
ただ、この本は要件と効果がわかりにくく、答案が書けないと感じたため、早々に使用しなくなりました。
■池田真朗「スタートライン民法総論」日本評論社
入門書です。
使い方:民法全体の概要を把握するため。
コメント:私はある程度学習が進んでから読んだのですが、基本書に入る前に読むことをお勧めします。
法律の学習方法や民法の体系を説明してから内容に入ること、また、解説の順序として民法総則を後回しにしていることから、頭に入りやすかったです。
難解な言い回しがないので、初学者でも読みやすいと思います。
物権
■佐久間毅「民法の基礎2 物権」有斐閣
民法総則同様、現在の司法試験受験生の中ではスタンダードな基本書。
使い方:ロースクールの授業に合わせて読んでいました。
コメント:民法総則と同じく、物権も佐久間を使用していました。
コンパクトな事案、要件、効果等がまとまっていて、とても読みやすかったです。
図解はあまりないので、後で読み返して分かりやすいよう、自分でふせんに図を書き込みして使っていました。
■松井宏興「担保物権法(民法講義3)」成文堂
担保物権は、この本か道垣内弘人「担保物権法(現代民法III)」を使っている人が多かったです。
使い方:一度通読した上で、ロースクールの授業の際などに該当箇所を読み直していました。
コメント:記述量は少なめですが、司法試験を受けるにあたって、この本1冊で特に問題はありませんでした。
債権
■中田裕康「債権総論」岩波書店
使い方:学説の説明が多く、通読はしませんでした。ロースクールの授業や過去問を解く際に、併せて該当箇所を読む程度です。
コメント:情報量としては十分なのですが、私には少し読みづらかったです。理由としては、掲載されている事案が抽象的にかかれており(金銭債権f1と被差押債権f2は…など)イメージがしづらかったこと、 学説の解説が多かったことが挙げられます。
■潮見佳男「プラクティス民法 債権総論(プラクティスシリーズ)」信山社
使い方:辞書的に使用していました。
コメント:要件事実を踏まえた記載になっているため、答案を書くなら中田より潮見の方が良かったと、学習途中から思っていました。具体的なケースが紹介されていたり、細かく項目を分けているところも読みやすかったです。
■潮見佳男「基本講義債権各論I・II(ライブラリ法学基本講義)」新世社
債権各論のスタンダードな書籍。とても目立つ黄色い本です。
使い方:分量があまり多くないため、ロースクールの授業に合わせて通読していました。
コメント:調べ物をするときには、やや情報量が足りないときもありましたが、答案を書くには十分でした。
親族・相続
■前田陽一・本山敦・浦野由紀子「民法VI 親族・相続(LEGAL QUEST)」有斐閣
使い方・コメント:論点との関係で調べ物をしたいときに使用していました。
なお、ロースクールの授業で使用したレジュメをメイン教材として使っていたため、基本書は、ほとんど使用していません。
会社法・商法
■伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征「会社法(LEGAL QUEST)」有斐閣
私が受験をしたときは、この本が主流でした(いわゆる「リークエ」のうちの一冊です。)。
使い方:百選と併せて通読しました。
コメント:百選の番号が振ってあり、裁判例と並行して学習するのに適していました。論点の説明がやや薄いところもありましたが、参考書を併用すれば特に問題はありません。
■江頭憲治郎「株式会社法」有斐閣
使い方:辞書的に使用。
コメント:内容は詳細かつ最新の議論も記載されていますが、どちらかと言えば実務家向けで、司法試験では使いづらいと思います。
理由としては、最新の議論が厚く、司法試験受験生が抑えるような基礎的な部分の記述が(相対的に)薄い、ということが挙げられます。
私はレポートを書くとき、調べ物をするときに、辞書的に使用していました。
■弥永真生「リーガルマインド商法総則・商行為法」有斐閣
使い方・コメント:商法はあまり勉強時間がさけないと思いますが、この本は分量も多くなく、ざっと通読するのに向いていました。
受験時に商法は手が回らなかったので、授業時に2回程この本を通読し、あとは不明点が出てきたときに読む、という使い方をしていました。
民事訴訟法
■和田吉弘「基礎からわかる民事訴訟法」商事法務
使い方:通読しました。
コメント:民事訴訟法の基本書の中で、最も読みやすい本です。図表が多く、また、易しい言い回しで、解説が非常に分かりやすかったです。
学説の引用も必要最小限に留めてくれるため、情報量が多すぎず、通読することが出来ました。
私は、「基礎からわかる民事訴訟法」を通読した上で、百選を読んだり、過去問を解いたりしてわからない点については、他の基本書(主に重点講義)を利用していました。
■高橋宏志「重点講義 民事訴訟法〈上〉〈下〉」有斐閣
使い方・コメント:「司法試験はここから出題される」といわれる本です。ですが、記述が詳細なため、通読には向いていません。授業や過去問を解くのに合わせて、辞書的に使用していました。
■藤田広美「解析 民事訴訟法」東京大学出版会
使い方:「基礎からわかる民事訴訟法」で基礎的な知識を入れてから、司法試験の解き方を学ぶために使用しました。分類としては、正確には問題集かもしれません。
コメント:「解析 民事訴訟法」は旧司法試験をベースに解説がなされており、論点と考え方を学ぶことができます。「基本書を読んだけれど、試験で問われていることにどう答えたらいいのか分からない」という方には一読の価値があります(他の旧司法試験を扱う問題集でも代替可)。
同じ著者の「講義民事訴訟法」を補完するものとして「解析民事訴訟法」があるようですが、私は「解析」のみを使用していました。
■三木浩一・山本和彦編「ロースクール民事訴訟法」有斐閣
使い方・コメント:ロースクールの授業で使用。民訴の学習が進んだ友人は良い本だと言っていましたが、解説がないことがネックで、私は授業以外使用していませんでした。
要件事実
■司法研修所編集「紛争類型別の要件事実」法曹会
使い方・コメント:問題集として、大島眞一「完全講義 民事裁判実務の基礎」(いわゆる大島本)や村田渉他「要件事実論30講」を使用する方もいましたが、手を広げず、紛争類型別をしっかり理解することが重要だと思います。司法試験受験時には、私は紛争類型別のみを教材として使用していました。
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。